〈最近の人民戦線の
重要基本文献集









すべてを歴史科学の運動法則と、歴史時代の産物としてみること。そしてその先にある歴史の前途はコミュニティー共同体であることをしっかり見つめねばならない!

 安倍総理大臣は三月十五日、首相官邸で記者会見し、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加を正式に表明した。その意義について、「わが国は自由貿易体制の中で生きていかねばならない。それはわが国の国益になると同時に世界の繁栄と発展にも貢献をもたらすものである」と語った。
 TPP参加の本質は何か。それは「アベノミクス」にとって必然の結果である。アベノミクスとは第一に、大胆な金融緩和。日銀総裁を入れ替えてでもお札を無制限に発行していく。第二に、大胆な財政政策。公共事業への財政投資、大胆な財政出動。第三に、民間企業の育成強化、成長政策である。これが「三本の矢」といわれるものである。このアベノミクスからいえばTPP参加は必然の帰結である。オバマ大統領がアメリカ最後の生き残り策として環太平洋の主導権確保に躍起となっているが、それと同じように安倍政権にとっても日米経済同盟の下、日米が運命共同体となってTPPを成功させる以外にないのである。ここにTPPの政治的本質がある。
 さて、TPP、つまり環太平洋経済連携協定には太平洋に面した国々、現段階では合計12各国が集まっている。そして完全な自由貿易をめざそうと各国が議論を進めている。これは一種の共同体である。西のEU、東のTPPというわけである。
 しかし、資本主義的自由主義は弱肉強食であり、強いものが勝ち、弱いものが敗北する、そういう社会的掟の中で、共同体が成功するはずがない。目の前に展開されている欧州共同体(EU)を見ればわかるとおりである。ギリシャが国家的財政破たんで崩壊しつつあり、それが起爆剤になりEU全体がおかしくなっている。すべては弱肉強食としての資本主義的経済法則の結果である。一番弱いギリシャが借金漬けになり、イタリア、ポルトガル、スペイン、キプロスへと次から次へ広がっている。一番強いのがドイツ、フランス、オランダ、イギリスで、これが欧州の南北格差と呼ばれている。弱いのがつぶれ、強いのが残る。あのEU(ヨーロッパ共同体)は崩壊しつつあるのである。
 資本主義制度のもとでは、共同体は成功しない。真の共同体は生産を共有し、分配を共同し、生活も共同化する、つまり国家と政治権力も共同体国家、共同体権力でなければならない。こうしてはじめてコミュニティー共同体が成功するのである。ただ今日の歴史時代が共同体を求めていることは間違いない。TPPもその一つであるが、この間に色々な共同体が生まれるであろうが、コミュニティーを抜きにした共同体は絶対に成功しない。EUはそのよきお手本である。資本主義制度、自由主義という名の弱肉強食、その制度、その土台を変革しない限り、上部構造としての共同体を図っても成功しないのである。資本主義制度はもう歴史的に古く腐敗堕落し、「モラルなき利益至上主義」「暴走する資本主義」となった。歴史は今やこの転換を求めて激動しているのである。
 人類の未来はコミュニティー共同体以外にない。だからヨーロッパの各地方都市に「コンビビア運動」と呼ばれる自然発生的な共同体が生まれているではないか。詳しくは昨年の二月九日付朝日新聞が大きく報道している通りである。コミュニティー共同体は幻想ではなく、現実に人類の歴史上(地球上)に出現しているのである。ここに現代の歴史時代認識があり、われわれは歴史科学に確信と信念を持たねばならない。

(一)TPPとは経済危機に陥っているアメリカを救うためにオバマ大統領が積極的に参加を表明してからにわかに注目を浴びたということを知らねばならない!

 そもそもTPP(環太平洋経済連携協定)とは何か、その目的はどこにあるのか。それは輸入品にかけている税金(関税)をお互いになくしたり、人の行き来やお金の流れをスムーズにしたり、自由な貿易圏を作ろうというものである。太平洋に面するシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの四ヶ国が二〇〇六年五月に締結した経済連携協定が土台となっている。
 もともと小さな国々による小さなグループにすぎなかったが、アメリカのオバマ大統領が二〇〇九年十一月、TPPへの参加を表明してから、一気に注目されるようになった。二〇〇八年のリーマンショック後、景気の低迷と高い失業率に苦しんでいるアメリカは、五年間で輸出を倍増させ、国内の雇用を増やそうと計画、その有望な輸出先として目を付けたのが、世界の成長センターといわれている東アジアである。現に、アメリカ通商代表部(USTR)のロン・カーク代表は「TPP構想はアメリカのアジア・太平洋地域向け輸出を劇的に増やすというオバマ計画の発射台になる」と言っている。
 TPPは必ず失敗する。アメリカがTPPを通じてやろうとしていることはアメリカの生き残り政策だ、ということである。アメリカの国益から出発したあがきである。アメリカはイラク戦争に敗北し、アフガンでも手痛い失敗をした。アメリカは孤立し求心力を失ってしまい、欧州の危機、EUにさえ口出しできなくなってしまった。「アラブの春」にも何ら手出しできなかった。アメリカは世界のいたるところでつまはじきにあい行くところがなくなった。残ったのはもはや太平洋しかなくなったのである。アジア太平洋地域を足場に、アメリカは何とか復活せんとあがいているのである。これがTPPの本質であり、アメリカが敗北し、崩壊へと向かう現代の歴史時代が生み出した産物である。

(二)「賢者は歴史に学べ!」歴史科学が示すとおりTPPは必ず失敗する。その手本はEU(ヨーロッパ共同体)であり、この歴史的事実がTPPの未来を予告している!

 三月八日付の朝日新聞は「欧州の危機は去ったのか」と題するパリ大学のジャン・ピサニフェリー教授がEUの運命について論じた一文を大きく報じている。パリ大学の教授はその中で次のことを強調している。
 「第一に政治が経済や市場の動きについていけないこと。南欧諸国のどこかで政変が起きるだけで、ユーロ圏の未来への懸念は再燃するだろう。さらにフランスの競争力の弱まり、そしてフランスとドイツの経済格差が、大きな不安の種になりつつある。
 第二の懸念は、通貨同盟を再び成功させるために具体的に何をすべきかについて、欧州の合意は限られたものでしかないことだ。銀行同盟は前向きな進展ではあるが、例えば共通の財政能力の構築、あるいは財務省の創設など、その先の改革についての合意は何もなされていない。
 そして第三に、この三年間で、危機に対応する際のパターンがはっきりした。穏やかな討議ではほとんど何も決定されず、圧力が弱まるたびに改革は先延ばしされた。欧州は生き抜くことへのこだわりは強く示したものの、共通の目的を達成するという意識は薄い」と。
 以上のとおり、パリ大学の教授がここで主張した三項目の内容を、歴史科学の立場からその核心を述べれば次の通りである。
 第一は、すべては国家と権力のあり方が決定する。国家の統一、政治の統一、権力の統一なしに、経済的統一の成功はあり得ない。資本主義の弱肉強食、無政府的自由主義をそのままにして、経済問題の共同化など成功するはずがないのである。
 第二は、通貨の統一は政治的経済的統一なしに成功するはずがない。通貨とは何か。それは商品交換のためのパイプであり、政治的経済的統一の土台なしに、通貨だけの統一などあり得ないではないか。だからEUは失敗したのである。
 第三は、自由競争という資本主義の経済法則のもとでは本当の共同化は科学的に、力学的に、上部構造としての共同化など不可能ではないのか。EUの現状はこのことを見事に証明している。
 パリ大学の教授は以上のことを言っているのである。先進的な知識人は事の本質を見抜いているのである。
 アメリカの求心力の低下や崩壊、キプロスにまで拡大したEUの危機,グローバル世界と現代資本主義の危機と崩壊、こうした現代の歴史時代が知識人や、先進的な人びとに「さあ、どうするのか」と問い掛けている。それに応えたのが「EUは成功しない」と述べたパリ大学のピサニフェリー教授であり、「資本主義は自己破壊的だと断定したマルクスは正しかった」と断じたニューヨーク大学のルービニ教授であり、最近の日本では「未来はコミュニティー共同体以外にない」と強調した浜矩子同志社大学教授や中谷巌一橋大学名誉教授である。
 歴史科学の法則として、現代資本主義とEUの崩壊は必然的に真のコミュニティー共同体を求めて、前へ、前へと前進する。ここに歴史科学の必然性がある。

(三)現代の歴史時代に、人類は何を求めているのか。それは真のコミュニティー共同体である!

 あらゆる問題の根本は国家と権力の問題である。政治運動と政治問題、あらゆる社会問題と諸現象の根本は、結局は国家と権力の問題に行き当たる。つまり、国家と権力の性質、性格。それを誰が支配し、何のために行使しているのか、というこの本質が一切を決定する。
 資本主義、その最高の段階たる金融独占資本主義の時代は、アダム・スミスの古典経済学が教えるとおり、それは人間欲望の自由放任主義であり、まさに「欲望資本主義に憑かれた人間たち、モラルなき利益至上主義に蝕まれた世界」なのである。そこから生まれてくるのが格差社会、非正規雇用、派遣社員、パート社員、ネットカフェ難民、ホームレス、働く貧困層(ワーキングプア)、無差別殺人、理由なき犯罪、暴走する人間の欲望、など以前には考えられなかった各種の凶悪犯罪の出現である。これらはすべて、現代資本主義、独占資本主義、その国家と権力の拝金主義支配が生み出す毒素である。すべての問題は本質的に、現代独占資本の国家と権力支配への反抗であり、一種の闘いであり、矛盾の爆発である。それは必然性を持って階級闘争、権力闘争へと転換する予備的現象なのである。
 すべてを科学的歴史観で見つめよ。
 滅びゆく独占資本主義と帝国主義、そして現代資本主義を救う道はもはやない。万物は常に変化し、発展し、転換していくという全宇宙の科学法則は万古不変である。二十一世紀は人民の人民による人民のための世紀への夜明けである。
 人類の歴史は原始時代―奴隷制時代―封建制時代―資本主義時代へ、そして現代独占資本と帝国主義の時代に登りつめた。資本主義の頂点に達した現代、らん熟し、腐敗し、堕落してしまった現代、その権力はもはや統治能力を失ってしまった。もはや老いてしまったのである。
 歴史の到達点はコミュニティー共同体である。人類が最初に作り出した原始共同体社会は、より発展し、前進し、より高度になって元に帰っていく。階級なき共同体、自覚し、認識し、確認しあった共通の意思にもとづく直接的な民主主義としての評議会を通じて、生産も、分配も、統治も、すべては共同体の中で執行される。人類最初の社会はそうであったのだ。これはすべてわが『人民戦線綱領!』が示しているとおりである。
 コミュニティー共同体社会では階級支配は基本的には消滅する。共同体社会であるかぎり、そこにあるのは人民大衆、ただ一つの階級社会である。人民の人民による人民のための社会である。故にこのような社会(存在)が、そのような存在(環境)が、それにふさわしい人間を作り出していく。環境が人間を作り出す。新しい時代と新しい社会と新しい環境が新しい型の人間を生み出す。こうして人類の前史は終わり、人類社会は新たな闘いに向かって前進する。それは全宇宙との闘い、宇宙の開拓と開発の闘いである。

結語

 哲学・科学的歴史観の核心、その三項目!

 (一)宇宙と万物は永遠の過去から永遠の未来に向かって絶え間なく運動し、発展し、前進し、転換していく。運動は主体・存在内部のエネルギーであり、その力の作用であり、主体としての存在がある限り、この運動は万物の法則として不変である。
 (二)人類とその国家と社会もまたこの万物の運動法則によって支配されている。人類の国家と社会の発展と前進と変化を促すエネルギーと力は生産力である。生産力は常に発展し、前進していく。この生産力の発展と前進に合わせて生産関係(人間関係、国家と社会制度)もまた発展し、前進し、変化していく。人類の歴史を見れば明らかである。生産力の発展が生産関係を変化させるという社会科学は人類の歴史に関する哲学歴史科学であり、歴史科学の必然的法則である。
 (三)地球上における人類の歴史の到達点は近代コミュニティー共同体である。それは人民の人民による人民のための政治と国家と社会である。それは共同生産、共同分配、共同生活、協力と連帯の人間的国家と社会である。そして人民の意志決定機関は評議会である。人類が最初に作り出した原始共同体社会は生産力の巨大な発展によって、より近代化された共同体として出現する。このとき人類の前史は終わる。それからの人類は挙げて全宇宙の開発に向かって前進する。
                                  (おわり)