2015年(平成27年)1月25日付 425号


資本主義は終焉するという、先進的知識人の予測は正しかった。二〇一四年、最大の難関であった「スターリン問題」解決の突破口が開かれた。新しい年、二〇一五年は「コミュニティー共同体から社会主義へ」、運動と闘いが大きく前進する年となる。歴史科学の必然性に確信を深めよう!

               二〇一五年一月アピール
                       日本人民戦線・議長  平岡恵子

 新しい年を迎え、人民戦線運動の幹部と活動家の皆さん、人民戦線と共に闘う先進的な皆さん、そしてすべての方々に連帯のごあいさつを申し上げます。
 去る二〇一四年はすべてがわが人民戦線の歴史時代認識の正しさを証明した一年でした。
 人類の歴史上、現代ほど地球的規模にわたる大混乱の時代はありませんでした。テロと暴力、暴動と反乱、クーデターと内乱、政治と権力の不安定、権力移動の激しさ。そしてこれらの混乱と混迷と迷走は、国境を越え、民族の差を超え、経済的・政治的・社会的連鎖のなかで各国を巻き込んでいます。もはや現代社会、現代政治、現代資本主義は人類社会を正しく導く能力を失ってしまいました。現代独占資本主義制度はついに寿命が尽きてしまったのです。現代地球上に発生している悲観的現象のすべては、新しい人類社会とその制度を生み出すための陣痛の苦しみなのです。
 私は二〇一四年アピールで、高橋乗宣・浜矩子両氏の著『二〇一四年戦後最大級の経済危機がやって来る!』に注目しよう。これは現代の歴史時代と現代資本主義を総括し、その運命を展望した歴史的文献である。先進的人々と分子はこれに正しく対応しよう!と呼びかけました。この一年間の闘いを通じてその正しさが実証されました。
 三月に日本大学教授・水野和夫氏は「資本主義の崩壊と歴史の危機」を書き、現代の歴史時代を証明する文献となり、京都大学名誉教授の伊東光晴氏は「アベノミクス批判」を著し、右翼民族主義の安倍首相を厳しく批判しました。このように次々と先進的知識人が声を上げ、現代資本主義の崩壊はだれもが認めるところとなりました。
 さらに、資本主義の次なる時代、コミュニティー共同体から社会主義へと進むうえで大きな障害となっていた「社会主義は崩壊した」とか「スターリン問題」に大きな突破口が開かれました。ついに慶応大学教授の横手慎二氏が「スターリン」を出版し、「スターリンを見直そう」と訴えました。歴史が大きく一歩前に進みました。
 世界を見れば、地球上最後の帝国主義であるアメリカの一極支配が、ついに終わりを告げ、現代資本主義は求心力を失い、無重力世界が出現、遠心力が作用し、俺も俺もとばかり、民族主義が世界に広がりました。そしてバラバラとなり、崩壊を決定づけたのであります。
 歴史科学の法則が示すとおり、生産力の発展が生産関係(人間の相互関係、階級社会、権力と国家)を作り出しました。人類の歴史は、原始共同体―奴隷制―封建制―資本主義―独占と帝国主義へと前へ前へと進んできました。ここで立ち止まっているわけにはいかないのです。資本主義崩壊後の新しい時代は、コミュニティー共同体から社会主義へという道以外にありません。
 日本でも同じことです。右翼民族主義の安倍政権が12月解散・総選挙に踏み切りました。それは野党がバラバラであり、選挙の準備も全くなく、今なら勝てると踏んだからです。「アベノミクス」の化けの皮もはがれ、その本質は見破られ、支持率も下がる一方だったからです。経済は停滞し、政界は大混乱し、安倍政権も不安定で、脆弱です。事実、十二月十四日の総選挙の結果もこの通りになりました。安倍政権は、選挙は圧勝であったと有頂天ですが、その政治的本質は圧勝どころか、大敗北だったのです。
 なぜそう言えるのか。二〇一五年アピールでは総選挙の総括を歴史科学の立場から提起します。その意義をはっきりと確認しようではありませんか。


二〇一四十二月衆院選挙結果にもとづく第三次安倍内閣の発足について!

 十二月十四日の投・開票結果について、十五日付の各新聞一面の大見出しは「自公3分の2の圧勝、安倍晋三首相長期政権への地固め」という文字が躍った。これによって十二月二十四日第三次安倍内閣は発足した。
 しかし安倍内閣の総選挙圧倒的勝利のその中身は、戦後最低の投票率(52・66%)で有権者の半分は棄権した。だから十七日付読売新聞は自公の勝利を「熱狂なき圧勝」と書き、世論調査の結果によれば、自民党の支持率は前回より5%減少して36%だったという。同時にその圧勝については「よくなかった」という人が半数近くもあったという。
 しかも今回の選挙の争点は「アベノミクス」の信任を問うものであったということから、本質的には安倍政権の右翼民族主義路線に対する信任投票だったのである。それがこういう投票内容だったとすれば「自公の圧勝」という票の数だけの表面的現象ではなく、政治的本質問題として安倍政権の勝利とは言えない。
 しかも、その票の中身は圧倒的多数たる無党派層(浮動票)であった。浮動票というのは、風の吹くまま、気の向くままであって、大空に浮かぶ、漂う薄い雲みたいなもので、いつでもどこにでも飛んでいく。そういうものに支えられた政権というものは確固たるものではない。ここからも安倍政権の圧勝たり得ないのだ。
 またこういう大きな政治問題を語る場合に大切なことは、すべてを哲学的演繹法にもとづいて俯瞰的にみることである。つまり哲学歴史科学として政治問題を考察することである。こうして科学的歴史観から見ても今度の選挙が安倍政権の圧勝とは言えない。


(一)今度の総選挙における歴史上最低の投票率という事実、そして安倍政権が解散に踏み切ったというそのタイミングのなかに「アベノミクス」の失敗と破綻、安倍政権の大敗北という本質がある。

 この問題に関しては多くの先進的知識人があちこちで大いに論じているが、その中で鹿児島大学の伊藤周平教授が十二月八日付日本経済新聞紙上でつぎのように論じていることに注目したい。伊藤教授はつぎのように書いている。
 「11月17日公表の7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質の前期比で2四半期連続のマイナスとなり、2014年度はマイナス成長となるおそれもでてきた。
 安倍晋三政権の経済政策(アベノミクス)により円安が続き、生活必需品を中心に物価が上昇している。4月の消費増税が追い打ちをかけ、実質賃金は10月まで16カ月連続で前年比減少を続けている。これが家計を直撃し、GDPの約6割をしめる個人消費が低迷している。日本経済は、増税によって景気後退局面に入ったとみてよい。
 こうしたなかで、安倍首相は消費税率の10%への再引き上げを15年10月から17年4月に先送りにすると宣言し、衆議院の解散・総選挙に打って出た。アベノミクスへの失望が広がって内閣支持率が大きく低下しないうちに、長期政権を狙い、早めの解散を決断した」と。
 その他、浜矩子同志社大学大学院教授、『資本主義の終焉』を著した日本大学の水野和夫教授、理論経済学の分野で著名な伊東光晴京都大学名誉教授などの知識人が各方面で同じ説を展開している。
 そして一般国民もまた、アベノミクスによって物価は上がり、賃金は上がらず、仕事はアルバイトか非正規の低賃金労働ばかりである。一般国民はアベノミクスの本質を肌で感じている。だから選挙に見向きもしない。史上最低の投票率なのである。有権者の半分ぐらいの投票率で選挙といえるのだろうか。ここに安倍政権の政治上の大敗北がある。


(二)「アベノミクスは経済法則からも必ず失敗する。その詳しい説明は水野和夫氏が『資本主義の終焉』の中で展開しているとおりである。もう資本主義の経済法則は歴史的に限界に達しているのであり、「アベノミクス」のような対症療法や劇薬処置ではどうにもならないのである。

 この問題についてはマルクスの『資本論』が、そして伊東光晴教授がその著作『アベノミクス批判』の中で詳しく展開しているとおりである。その基本的見解は次の点にある。
 経済活動の基本原理は、生産力の発展と前進が生産関係(国家と社会)の発展と前進を促すのであって、アベノミクスはそうではなく、金融緩和というマネーゲームなのである。これこそ対症療法であり、劇薬処置なのである。これは誠に大きなリスクと危険を伴うものである。その実例は歴史上たくさんある。こういう実例を重ねながら新しい歴史時代を生み出していくことがマルクスや伊東教授の学説から読み取れる。ここからもアベノミクスの失敗と敗北を知ることができる。このことからも今度の総選挙における安倍政権の敗北を確認できる。


(三)井伊直弼と「安政の大獄」が徳川幕府の崩壊を早めたように、安倍晋三と「アベノミクス」は日本経済の崩壊と政治的転換を早める転機となる。ここに安倍政権の歴史上の役割がある。

 マルクスは『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』(一八五二年)の中で「歴史は同じことを二度繰り返す」と書いている(註・マルクスが書いているのは、歴史というものは、新しい時代に応じた形態を生み出すが、本質的には同じことを繰り返しつつ前進する、と言っているのである)。
 徳川幕府三百年の鎖国政策(封建制)を崩壊させ、新しい近代(資本主義)に転換させた切っ掛けはアメリカのペリー艦隊の来航であった。ペリーがアメリカ政府の国書を提出して自由貿易を要求したのは、ヨーロッパを中心にして、自由貿易と、近代資本主義の時代に移行していたという歴史時代が日本に押し寄せた、ということである。この歴史科学の法則は、現代では、水野和夫氏の著作が示しているように、現代資本主義はもはや行き詰まってしまい、新しい時代、コミュニティー共同体を求めている、という歴史時代が日本に押し寄せて、日本の政治を揺り動かしているのである。歴史は繰り返す。
 ペリーの来航という外圧が内圧となって内部矛盾が激化し、徳川幕府の内部対立が深まり、その統治能力は低下していく。歴史の転換を求めて尊皇攘夷運動は高まる。蘭学に目覚めた討幕の志士たちが決起する。政治的混乱は頂点に至る。このとき幕府の本流(徳川家康を支えていた譜代大名)は最後の手段として、徳川四天王の筆頭、井伊直政を始祖とする彦根藩主井伊直弼を大老(首相)に就けた。井伊は「安政の大獄」を実行、討幕の志士たちを次々に逮捕・投獄・処刑を実行した。だがこのことが反対に討幕運動を激化させ、やがて大老井伊直弼は志士たちによって暗殺される(桜田門外の変)。そしてついに武力討幕へと進む。こうして徳川幕府は崩壊した。日本は封建制から脱出して近代資本主義へと移行したのである。つまり歴史科学の法則は、如何なる力によってもこれを止めることは出来ないということであり、歴史は到達すべきところに必ず到達する、ということである。現代の安倍政権が如何なる方策を実施せんとしても歴史の進行を止めることはできない。現代の歴史時代は独占資本主義時代からコミュニティー共同体を通じて社会主義をめざす転換期の時代である。だが旧体制を守りたい守旧派たる右翼民族主義派は最後の手段として、昭和の怪物といわれ、A級戦犯に名を連ね、一貫して憲法改悪を叫び続けた元総理大臣であった岸信介を祖父とする安倍晋三を押し立て「アベノミクス」という「安政の大獄」を実行しようとしている。だがこれは歴史科学の法則から絶対に不可能なのである。歴史というものは、その運動法則から、絶対に後戻りしないのだ。歴史は前へ前へと進むのであって、その逆はあり得ない。これは好むと好まざるとにかかわらず科学的法則なのだ。このような哲学科学的歴史観からみて安倍晋三の運命は井伊直弼の運命と同じである。歴史は繰り返す。こういう演繹的思考から見ても今度の総選挙は安倍政権にとっては敗北なのである。


結語

 歴史は科学法則であることを確認しよう。徳川幕府の崩壊を早めた井伊直弼と「安政の大獄」、日本の右翼民族主義の崩壊を早めた安倍晋三の「アベノミクス」など、すべては哲学歴史科学の産物であることを、この文書から学び取ろう。哲学歴史科学は絶対的真理である。歴史を信じ確信をもって前進しよう!

(一)宇宙と人類社会は永遠の過去から永遠の未来に向かって一貫して運動し、発展し、前進し、転換していく。一つの時代と社会制度が永遠であったことはない。
(二)人類とその社会は生産力の発展に応じて常に変化していった。現代社会を支配している独占資本主義はもうすでに頂点に達し、次の段階に転換せざるを得ない。それはコミュニティー共同体から社会主義への道である。ここに歴史科学が示す必然性がある。
(三)われわれは歴史科学を信じ、未来を信じ、現代の歴史科学が要求する課題に向かって戦い抜く。歴史の転換は先進的で、前衛的な人士と集団の推進力なしには実現できないことを知っている。故にわれわれは歴史の要求に答えて、価値あるその任務を全うすることを誓う。
(以上)