2016年(平成28年) 9月25日付 445号


「変わらないために変わらねばならない」(福岡伸一)という哲学・科学的世界観の生きた証明としてこの特集をしっかりと認識しよう!

毎日新聞社刊『週刊・エコノミスト』8月9日―16日号は特集を組み、「世界の危機、分断と反逆」、「世界に広がる国家の分断」という大胆な見出しで、現代の世界に発生している各種の大事件(世界に広がるテロとの戦争、英国のEU離脱、アメリカ大統領選挙におけるトランプ旋風)などをとりあげ、これはまさに世界の危機であり、国家の分断であり、国民国家の崩壊であると断定。世界のリーダーたちは今こそこの危機に正面から対応しないと取り返しができないことになる、と警鐘を鳴らす。
 こういう高度な政治・経済問題は、高度な演繹的、つまり哲学・科学的世界観から論じないかぎり、結果としてニュース解説的な抽象論におわってしまう。


『変わらないために変わり続ける』(自然科学者・福岡伸一著、文藝春秋社刊)という自然科学の運動法則は人類世界にも貫徹されていることを知らねばならない。万物は一貫して変わり続けつつ、永遠なのである。ここに哲学、科学的歴史観がある。

 福岡伸一氏(青山学院大学教授・生物学者)は右の著作とあわせて『生命はいつ、どこで、どのように生まれたのか』(集英社インターナショナル刊)や、2014年8月17日付日本経済新聞「芸術と科学のあいだ」という一文などで人類世界について、自然科学の法則を説き続けている。それはビッグバンによって生まれたこの大宇宙は内在するエネルギーの運動によって永遠に動き続く。この運動こそが万物の母であり、あらゆる存在は運動の産物である。運動なくして存在はなく、存在とは運動である、と説いている。
 その運動するあらゆるものは、互いに関連しつつ、結びつき対立し、一つになり、そして遠心力と求心力が働き、互いに連続し、絡み合いながら、すべて継続されていく。運動と連続、らせん的な継続、そして成長と交代、死滅と生成、すべては変わらないために変わり続けるのである、というのである。
 この宇宙は永遠に運動するため古い宇宙は死滅し、新しい宇宙が生まれる。すべての星は古いものは死滅し、新しい星が生まれる。植物も、動物も、人間も、古く老いたるものは死滅し、新しいものに変わる。永遠であるために変わらねばならない。福岡伸一氏はこの運動を「リスペクト」と呼ぶ。まさにリスペクト、何という気高くも尊厳的であることか。この大自然の法則がわかるか、わからないか、ここに、知性主義か、反知性主義かの分かれ道がある。
 われわれは、高度で複雑な問題にはこのような哲学・科学的な世界観から解明しなければならない。


『週刊・エコノミスト』特集号は何をどのように論じているのか。その核心は次の諸点にある!

まず表紙は色彩豊かに次の活字が大きく踊っている。
 「世界の危機、分断と反逆」、「世界に広がる国家の分断」、「既存通貨への不信、ビットコインの急騰」。
 そして世界に衝撃を与えた英国の欧州連合(EU)からの離脱問題についてはつぎのようにいう。
 「英国経済は2008年のリーマン・ショック(世界的金融危機)からは着実に回復した。しかし、企業収益は好調な割には賃上げは進んでいない。反面、ロンドンの住宅価格は、世界の投資マネーの流入で、リーマン・ショック前よりも、3割近く高い水準に上昇している。そしてイングランドなど地方の景況は低迷しており、英国各地にさまざまな歪みを生み出してしまった」と。
 そして東欧などからの難民流入にまつわる公共サービスのただのり論などが噴出し、国民は諸悪の根源をEUの一方的な強制政策にあると、イギリス民族主義をかきたててしまった。
 こうして問題の本質はEUとの対外的な関係というよりも、新自由主義的(グローバリズム的)経済政策によって生まれた国内問題、つまり英国内部の問題、国内の新しい矛盾の爆発(大衆の反乱)が根底にあると断定する。
 つまり、外交問題とは内政問題であり、外交上の決着は内政問題が左右するという、哲学的内因論の法則が貫かれていることを論じているのである。
 こうしてこの特集は最後に「やせ細る中間層の怒り、世界に広がる反グローバル化」という大見出しのもと世界中のあらゆる国と地域に分裂、分断、反逆が生まれ、世界は危機に至っている、という。
 「世界が分断と反逆の渦に包まれている。その先頭集団を走るのは英国と米国である。英国はEU離脱を通じてヨーロッパに反逆し、米国ではトランプ旋風が吹き荒れ、分断と反逆は世界各地に広がっている。ヨーロッパ(EU)各国はみな国内に右翼民族主義政党が反EU(EU離脱)運動を展開、その勢力は拡大している。そしてそこに共通しているのは大衆の怒りや不満の矛先が、既存の古い政治体制、政治勢力(エスタブリッシュメント)への不信と怒りと反逆にある」という。
 アメリカ大統領選挙におけるトランプ旋風も、ヨーロッパ各国に台頭するテロ戦争も、世界各地に噴き出す民族主義も、その根底にあるものこそ歴史の(大衆の)反逆(反乱)なのである。
 われわれは一貫してすべてを哲学・科学的世界観からみつめねばならない! 


現代資本主義は頂点に達し、老いてしまい、ただ利ざやだけを追い求めて動く金融資本主義が暴れまわっている。もう未来はない。故に「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)に達したのである!

 2016年5月12日付日本経済新聞に東レ社長の日覺昭広氏が次の一文を「私見卓見」欄に発表している。「国内の経営環境は米国の金融資本主義の影響を受けすぎていて危機感を感じる」と。そして本来金融とは物々交換のための手段であった金融(貨幣)がついに主流になってしまい、実体経済をも支配する時代になった。お金で景気を何とかしようという風潮は邪道だと現状を批判している。これは正しい。だがこの問題の本質はアメリカが悪いのではなく、現代資本主義がついにここまで上り詰めた、というのであって、資本主義の法則なのである。つまり、現代資本主義は頂点に達し、老いてしまい、ただ利ざやだけを追い求めて動く金融資本主義がグローバル時代の波に乗って世界中を荒らしまわっているのである。こうして資本主義の転換を歴史が求め、いたるところで、あらゆる爆発を引き起こしている。東レの日覺社長の見解は経済界の総意であると同時に、これは、資本主義の本質なのである。
 資本主義、その最高の段階たる金融独占資本主義の時代は、アダム・スミスの古典経済学が教えるとおり、それは人間欲望の自由放任主義であり、まさに「欲望資本主義に憑かれた人間たち、モラルなき利益至上主義に蝕まれた世界」なのである。そこから生まれてくるのが格差社会、非正規雇用、派遣社員、パート社員、ネットカフェ難民、ホームレス、働く貧困層(ワーキングプア)、無差別殺人、理由なき犯罪、暴走する人間の欲望、など以前には考えられなかった各種の凶悪犯罪が出現する。これらはすべて、現代資本主義、独占資本主義、その国家と権力の拝金主義支配が生み出す毒素である。それは本質的に、現代独占資本の国家と権力支配への反抗であり、一種の闘いであり、矛盾の爆発である。
 現代資本主義世界を引っかき回している金融資本主義の本質を鋭く論評した二人の著名な知識人の論評を見よ。ここに現代世界の本質がある!

 堺屋太一氏の論評
 二〇〇七年夏ごろから始まったアメリカの金融危機、二〇〇八年九月に発生したリーマン・ショック(アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズ社の倒産)、このアメリカの金融危機が全世界を大混乱に陥れた。その危機を作り出した原因はアメリカのサブプライム・ローンの破綻であった。そこで、ではサブプライム・ローンとは何か、ということについて堺屋太一氏は明確に答えている。
 通産省の元高級官僚で国務大臣を務め、現代は作家であり、ジャーナリストの堺屋太一氏は『中央公論』二〇〇八年十二月号で「サブプライム・ローンとはノーベル賞級の詐欺である」と喝破している。堺屋氏のいうとおり、それは誠に複雑怪奇な仕組みで大衆を収奪する強欲な制度である。政府が背後で保証し、信用の低い大衆の個人的欲望に付け込んで住宅ローンを組ませる。そのとき、直接大衆と接触するのは仲介業者(ブローカー)である。彼らはあの手、この手を使って顧客を獲得する。その人が果たしてローンを返済できるのかどうかは関係ない。彼らの収入はそのマージンであるからひたすら数をこなすのが目的で、自分の儲けが第一なのだ。銀行・金融機関もどんどん貸し出していく。やがて訪れるそのリスクに備えて貸し付け証書を証券(株券)にして世界中に売りさばく。これを買う金融機関や業者たちは、アメリカ政府が保証しているから信用してしまう。そしてアメリカ経済の困難によっていよいよローンが破綻するに至ったとき、アメリカ自身の金融機関は、政府による「公的資金」の投入によって救済される。公的資金とは国民の税金である。救済された金融機関の役員たちは数十億円の報酬や、数百億円の退職金を得て涼しい顔である。堺屋太一氏が「ノーベル賞級の詐欺」だというのはこのことである。これはまさに「金融寡頭支配」の産物そのものである。

 ポール・ケネディ氏の論評
 世界資本主義は十八世紀の産業革命、十九世紀の独占資本主義から帝国主義へ。これは産業独占から金融独占への転化であり、すべては金融支配、金融寡頭支配への移行であり、すべてはカネが支配するに至った。そして当然世界は一つになり、経済的に単独で、一国だけでは成り立たなくなった。グローバル(世界的・国際的)な世界なのである。
 このことの本質について、ポール・ケネディ(イギリスの著名な歴史学者で、その主著『大国の興亡』は世界的なベストセラーになった)は、二〇一一年七月十日付読売新聞に『地球を読む』という欄でつぎのように書いている。
 「ドル支配の時代は終わりに近づいている……問題は、米国の信用が疑われていることだ。……大きな勝者は投資家たちだろう。今日の国境なき世界において、彼らは国家的な忠誠心を持たず、一日中、利ざやを求めて動く。彼らは商品市場のあらゆる理性を破壊した。銅の先物買いをするのは、銅線を作るためではなく、翌日売って15%の利益を得るためだ。どこかの国の通貨を、破綻に追い込むほど売り買いすることもできる。遊べる準備通貨が三つもあれば、彼らは大喜びするだろう。……なぜなら……世界を動かしているのは、まさに通貨だからである」と。
 このポール・ケネディの一言は、みごとに現代資本主義の本質、金融独占資本主義の本質、現代資本主義崩壊の必然性を明確にしている。


哲学・歴史科学の法則は、資本主義崩壊は必然であり、その後は人民の世界であり、コミュニティー共同体から社会主義への道であることを示している。これは科学的法則である!
     ―コミュニティー共同体とは何か―

 人類の歴史はそのエネルギー(生産力)によって一貫して運動し、前進し、発展し、転換(変革)されてきた!
 エンゲルスは『自然弁証法』(1875年)によって宇宙と万物を支配するエネルギーの運動法則の産物としての現代世界のあり方を解明した。
 マルクスはその著作『経済学批判・序論』(1859年)によって人類世界の歴史と未来展望について哲学・歴史科学的に解明した。哲学歴史科学観の核心はつぎの点にある。
 @ 人類の歴史とその社会(国家と社会制度)のあり方を決定するのはエネルギーとしての生産力である。「生産力が生産関係を決定する」。つまり、経済力が生産関係たる国家と社会のあり方を規定していく、ということである。生産力とは人間の労働能力だ。
 A 生産力は常に前進し、発展していく。一ケ所で止まった時代は一つもない。これにもとづいて国家と社会も常に変化していった。原始時代―古代―中世―近世―そして現代という歴史過程を見ればはっきりしている。
 B 歴史は常に運動し、前進し、発展し、転換していくのであって一ケ所に止まっているわけではない。現代資本主義はつぎの時代たるコミュニティー共同体から社会主義へと移行せざるを得ない。これは哲学歴史科学が進む必然の道である。
 C 哲学・歴史科学の運動法則が現在求めているのは、最大限の利益追求第一主義・物質万能主義と拝金主義・自由競争という名の弱肉強食・非人間的格差社会、という現代資本主義の否定である。
 そして人民の人民による人民のための世界・共同生産・共同分配・協力・共同・連帯の人間社会・大自然と共に生きる豊かな人間生活の実現を求めているのである。
 D 現代資本主義は独占と帝国主義の時代、最高度の段階に到達し、登り詰めてしまった。エネルギーの運動法則から転換せざるを得ない。これで人類の前史は終わり、新しい歴史時代に移行する。
 E この人類の後半たる新しい歴史時代とは何かについてエンゲルスは『自然弁証法』で明言している。「人類は挙げて大宇宙との闘いに進軍する」と。


コミュニティーとは何か!

 ▼ 哲学・歴史科学の運動法則が現在求めているのは、最大限の利益追求第一主義・物質万能主義と拝金主義・自由競争という名の弱肉強食・非人間的格差社会、という現代資本主義を否定する。
 そして人民の人民による人民のための世界・共同生産・共同分配・協力・共同・連帯の人間社会・大自然と共に生きる豊かな人間生活の実現、である。
 ▼ コミュニティー、人民による人民のための人民の世界。それは国家、社会、生産活動の運営目的を、最大限の利益と利潤追求のみに注ぐのではなく、すべてを人民の生活と文化水準と社会環境の安心・安全・安定のために注ぐ。
 ▼ 金と物がすべてではなく、人間の心と自然の豊かさが第一であり、姿や形だけの美しさではなく、働く人びとの生きる姿と心の美しさが第一であり、一人だけで急いで先に進むのではなく、遅くてもみんなが一緒に進む。
 ▼ 人類とその社会は生まれたときから環境の産物であり、歴史的なものであった。環境が変われば人類とその社会も変わる。国家と権力が変われば人類社会は変わる。
 ▼ そのための力こそ、すべてを人民のための・人民による・人民の政治と権力であり、その具体的表現たる人民評議会である。ここに本当の民主主義がある。
 ▼ 人類が最初にはじめてつくった社会は、原始的ではあったが、そこにはまさに共同と共生と連帯の人間的社会があった。そしていくたの回り道をしたが、その間により大きくなってもとに帰る。つまりより高度に発達した近代的コミュニティー国家と社会へ。ここから本当の民主主義にもとずく人間社会、人民の社会が生まれる。こうして人類は総力をあげて大宇宙との闘い、新しい闘い、宇宙の開発と開拓の闘いに進軍するであろう。


結語
哲学・歴史科学の法則は、資本主義崩壊は必然であり、その後は人民の世界であり、コミュニティー共同体から社会主義への道であることを示している。これは科学的法則である!

 決定的時期に決定的役割を果たすものこそ、物質的な力としてのコミュニティー共同体であり、それは東日本大震災という歴史が生きた証明として生み出している。歴史に学べ!
 2016年6月30日付朝日新聞は「海を取り戻す共同体」、「漁協主導の共有船方式」、「金持ってる者だけが生き残るなど許されねえ」という見出しのもと、岩手県・宮古市の重茂漁業協同組合での出来事をつぎのように報じている。
 今春の漁協総代会。組合長の伊藤隆一(77)は、震災で抱えた7億9千万円の特損が今年度中に消える、と胸を張った。
 売上高は震災前の8割だが、1人あたりの生産額では以前の水準を上回る。組合員は平均57歳、県平均より8歳若い。岩手の漁協で一番元気、とされるゆえんだ。
 組合員403世帯のうち88の家が流され、漁協所属の船814隻は98%が消えた。
 震災直後、伊藤は漁師ほぼ全員を漁協の大会議室に集めた。床にあぐらの約400人に漁続行を宣言。船の共同利用を提案する。
 「金は何とかするから、秋田や山形で中古船を集めてくれ。それを皆で使おう」
 ワカメも、ウニやアワビも、各自が船を持ち、個の才覚で水揚げを競うのが漁師。数人で1隻、収穫は等分なんて誰もが初めてだ。蓄えで新船を造れる仲間もいたが、組合長は抜け駆けを認めなかった。
 「金持ってる者だけが生き残るなど許されねえ。ここで暮らすか、出ていくか」。思い定めた伊藤の迫力に、異論は出なかった。
 天然ワカメ漁が始まる5月までに、70隻の船を確保した。水産庁の造船支援も始まり、11月のアワビ漁では2人に1隻に。ワカメもアワビも、震災前のようにとれた。震災から2年で船が行き渡り、それぞれの水揚げを収入とする本来の姿に戻った、と。
 これがコミュニティー共同体であり、共同体の力である。そして歴史がこの共同体を作り出したのである。同時に共同体こそが人民大衆の生きる力であり、ここに歴史の必然性があり、歴史は到達すべきところに必ず到達する!