2016年(平成28年) 11月25日付 447号


「歴史は永遠であるために変わり続ける」(福岡伸一)のであり、これは万物を支配するエネルギーの運動法則である!

アメリカ大統領選挙の結果について!

(一)その結末。
 女性初の大統領をめざす前国務長官のヒラリー・クリントン(69)と不動産王でアウトサイダーの異端者といわれたドナルド・トランプ(70)の対立であったがトランプの圧勝であった。
 当初はトランプの人間性(その過激性、品格、暴言)などで不利とみられていたが、まったくの逆転でトランプの勝利となった。
(二)その原因。
 アメリカ国民、特に白人の青年層、中産階級の「反エスタブリッシュメント」(政治的支配層への怒り)、ワシントン権力の反庶民政策による失業、貧困、格差拡大、前途への不安という社会現象が大きな雪崩となってトランプに行ってしまった、のである。大衆の反乱が、六月に起こって衝撃を与えた英国のEU脱退につぐアメリカの大衆的反乱となった。
(三)世界各国の反響。
 共通しているのは英国とアメリカという二大帝国であった国がそれぞれ内乱を引き起こしたということのなかに、世界の危機、大混乱、そして世界は漂流する時代になった。そしてこれは一種の革命である。
(四)朝日新聞は十一月十日付で特集を組み、「世界秩序どこへ」、「外交・経済崩壊の危機」と題して、資本主義制度そのものの危機を恐れる論評を展開した。
(五)最近、作家で国際ジャーナリストの落合信彦氏が「そして、アメリカは消える」(小学館)と題する著書を出し、大変注目されている。落合氏は、高校卒業後アメリカのオルブライト大学、テンプル大学大学院で国際政治学を学び、国際ジャーナリストとして活躍している。ここで彼は何を言っているのか。その要点を紹介したい。
 現在のアメリカは、世界中から笑われている。特に今まさに繰り広げられている大統領選挙は笑いを誘う。ヒラリー対トランプ? 彼らの演説を聞いていると、歴史や政治哲学も知らず、ただ相手の悪口を言うだけのガキのケンカにすぎない。どちらが勝つにしても、アメリカの崩壊はまぬがれないだろう。
 現在の世界状況を見ると、ジャングルという言葉が当てはまる。超大国だったアメリカは世界の笑い者となり、移民たちの世話をしながら経済は破綻しようとしている。
 今は「アメリカが崩壊すれば、世界がジャングル化する」という状況だ。
 長年、世界の警察官として地域紛争や戦争を止める役割を果たしていたアメリカは経済的、軍事的、外交的にもトップ中のトップだった。だがその「大国アメリカ」はもはや消えてしまった。経済はガタガタで多額の借金に苦しみ、中国やロシアがアメリカを戦争に引きずり込む訓練をしていても、戦争を嫌うオバマは何の反応も見せない。アメリカは引きこもり状態に入ってしまったのだ。

 結 論
 以上の諸情勢を知れば次のような結論が明確になる。
 つまり現代の歴史時代とは何か、という時代認識の問題である。それは、アメリカの世界支配は終わり、世界には帝国主義国家は存在しないという歴史時代になった。
 その結果、世界は無重力の時代となり、至るところに民族主義があふれ、世界中に対立と抗争、戦争と暴力、テロと内乱、あらゆる犯罪があふれ出す状況となった。まさに世界は無政府状態である。歴史は破壊のなかから建設がはじまる。つまりこうした資本主義は終わり、次の時代たるコミュニティー共同体から社会主義へと前進するのである。歴史は永遠であるために変わり続ける(福岡伸一)。これはわが党の一貫した主張であり、歴史はその通りに進んでいる。われわれは哲学・科学的歴史観に確信を持ち、歴史の必然を信じ、未来に希望を持って前進しなければならない。

〈トランプ旋風はアメリカ民族主義の暴発である〉
この問題を単なる「ニュース解説的」に論ずるのではなく、現代の歴史時代の産物として「演繹的」(思想的・政治的)に論じなければならない!

 現代の歴史時代とは何か。それは世界は無重力の時代であり、漂流する時代であり、大衆の怒りがいたるところに爆発している時代である。その根底にあるのは資本主義というこの政治・経済・社会制度が生み出す必然の産物としての抑圧と生活苦、失業と貧困、格差社会の拡大と前途への不安、である。この現象と原因については水野和夫氏の著作『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)が解明しているとおりである。つまり歴史は人類社会の根本的転換期に到達しているのであり、人類社会は永遠に存在し続けるために、原始社会から奴隷制へ、そして封建制から資本主義へ、こうして次の時代たるコミュニティー共同体へと変わらなければならない時代に到達しているのである。歴史は変化を求めて爆発する。
 これは哲学・歴史科学の必然の法則である。この必然性が、人類社会最後の帝国主義国家たるアメリカ帝国主義の一極支配を終わらせた。その結果ついに世界は重力を失い、無政府状態となり、バラバラになり、必然的に、人間欲望の自由主義の国家形態たる民族主義と無差別テロが爆発しているのである。
 今日、全世界に吹き上がる対立と抗争、内乱と暴動、国家間の紛争と非難合戦などはみな、すべては歴史と民族主義の爆発である。民族主義が形や姿を変えて、宗教対立となり、経済紛争となり、国境紛争となっている。しかし歴史が証明しているとおり、民族主義に未来はない。歴史が封建制の遺物としての民族主義を拒否するのである。それは、民族主義の典型であったヒトラーと日本軍国主義の歴史が明確に証明している。
そして特筆しておかねばならないのは、現代ヨーロッパを大混乱と動揺に落し入れている難民問題である。内戦が続く中東、シリアなどからヨーロッパに殺到する難民・移民は今年までに400万人となり、第二次世界大戦以来の最大の危機と呼ばれる事態となっている。それが欧州連合(EU)内の各種の矛盾と結びついてヨーロッパの危機を生み出しているのである。
 平和と生活と身の安全を求め、祖国と故郷を捨て、流浪の民となって、当てもなく、これだけの多くの民がさ迷うような時代は今までなかった。ここに現代資本主義の政治的危機がある。もはや現代資本主義に人類を豊かにする能力はなくなったのである。ここにも歴史の転換期を見ることができる。すべては『資本主義の終焉と歴史の危機』という経済上の土台が、このような政治的・社会的危機を生み出しているのである。
 すべての出来事と現象は歴史の必然性とそのときの歴史時代の産物である。


トランプ旋風の特異性は、アメリカの歴史上初めての黒人で「チェンジ」(変革)を叫ぶオバマ大統領を出現させたあの熱狂の反動、反作用の産物だということである。これがアメリカ国民の「反エスタブリッシュメント」(既成支配者集団への拒否)的空気と結合した暴発である。すべてを現代の歴史時代の産物として見つめ、ニュース解説的な評論家になってはならない!

 2008年11月4日、世界が注目した米大統領選の結果、黒人の民主党バラク・オバマ上院議員(47)が、共和党のジョン・マケイン上院議員(72)を圧倒的大差で破り、新大統領に当選した。日本の大新聞はこぞって「共和党歴史的大敗北」「米国初の黒人大統領誕生」「保守時代の終えん」「変革、米国に到来」「米国現状拒否を選択」などなどの大見出しが踊った。まさにオバマ大統領の出現は大激震となってアメリカ国家と社会と政治を根底から揺さぶり、世界に衝撃が走ったのである。アメリカは変わらなければならない。歴史は動き、変化し、進歩していくという歴史科学の法則である。イラク戦争の敗北、米国発の金融危機、そしてオバマ大統領の出現が、一つの巨大な塊となり、歴史発展の梃子(てこ)となったのである。しかも「オバマ旋風」の原動力となったものは若者たちであり、彼らのエネルギーと正義感は、頭が高い「古いアメリカ」に一撃を加え、独占と帝国主義支配に引導を渡したのである。世界におけるアメリカの敗北は決定的であり、最後の帝国主義・アメリカ帝国主義の崩壊を本国においても決定付けたのである。大転換を求めた「オバマ旋風」という若者の反乱は、その集中的な事件であった。
 さて、オバマ大統領の2期8年のその結果はどうだったのか。3月17日付、日本経済新聞は「経済格差、人種問題、政治不信に病める米国」と題して次のように論じている。
 「病めるアメリカとは何か。第1は経済格差のいっそうの拡大である。米国では上位5%の高所得層が富の63%を支配し、下位50%の低中所得層が抱える富は1%にすぎない。第2は人種問題をめぐる対立は益々深まっている。第3は政治不信である。既成政治集団は大企業、大口政治資金に頼り、一般大衆の声は無視されている。第4はオバマ大統領には失望した。大衆の怒りは頂点に達している」というものであった。
 ここにトランプ旋風を生み出したアメリカの歴史時代がある。希望を託したオバマは裏切り者だ。もう誰も信じられない。大衆の怒りがトランプを動かした。これがアメリカの歴史時代であり、歴史が大衆を揺り動かしているのである。ここに歴史の法則がある。


われわれの未来展望!

 米大統領選挙に関する報道で、投票前、米主要メディアは軒並み民主党のクリントン前国務長官の当選を予測し、クリントン支持を表明していた。しかし予想に反して共和党のトランプが当選を決めた。結果を受けて新聞報道の世界では「番狂わせだ」「メディアは敗北した」というのが共通した認識である。ジャーナリズムの世界は依然として科学的歴史認識を持たず、ニュース解説、ニュース報道に終わっている。その代表例が11月12日付産経新聞の記事である。
 それは、大きな見出しで「予想外れ米メディア敗北」「反省・謝罪文掲載、弁解・僅差で困難」として、この結果は今後の世論調査の信頼性に疑問符が付き、選挙報道におけるメディアなどの影響力に陰りが出る、と書いている。そして、米紙ニューヨーク・タイムズは、「米国民の怒りの声にもっと耳を傾けるべきだった」「有権者の思いをつかむのに失敗した」と選挙予測の失敗に関する反省文を編集幹部が掲載した。また選挙予想に定評のある調査会社所長は「われわれは間違えた」と謝罪文をサイトに掲載した。
 これは米メディア、世界メディアの共通認識であり、共通した弱点である。それは国民の怒りや、本当の気持ちをつかみきれなかった、失敗した、というような表面的、方法論的なものではない。トランプ現象は現代の歴史時代の産物であり、歴史の流れの中における出来事である。今、まさに歴史は資本主義の崩壊、コミュニティー共同体から社会主義へ向かう転換点にある。資本主義の危機が生み出す格差、失業、貧困、前途への不安に対する国民の怒り、反エスタブリッシュメント(政治的支配層への怒り)、反乱である。こういう科学的歴史観がないから、情勢を見誤るのである。決して単なるニュース報道や解説になってはならない。
 また、トランプは人格がない、暴言を吐く、スキャンダルだらけだ、異端児だ、と連日メディアや世論からたたかれた。暴言や過激な発言はむしろ攻撃の嵐から身を守ろうとする自己防衛でもあった。資本主義制度、支配階級への国民の激しい怒り、反発、反乱が逆に共感を呼んだのである。国民大衆は反乱に立ち上がっているのだ。まさかの、EUからの離脱を決めたイギリスの国民投票も歴史の反乱であった。
 われわれはすべてを哲学・歴史科学的世界観に徹するよう呼びかける。われわれは一貫して次のような哲学・科学的世界観、歴史科学観を提起する。
 ①人類とその社会は永遠の過去から永遠の未来に向かって運動し、発展し、爆発し、収れんされつつ前進していく。そのエネルギーは人間の生きる力であり、その物質的表現としての生産力である。
 ②生産力の発展がその度合いに応じて生産関係としての人類社会(国家)を作り出していった。それは最初の原始共同体、次の奴隷制、封建制、資本主義制、そして社会主義へと一貫して生産力の発展が生産関係(国家)を変化させていった。これからもそうなる。
 ③物理学が証明しているとおり、すべての生物は環境が作り出していく。人類もまた環境の産物であり、進化していった。環境が人間を変えていく。新しい環境と新しい社会は新しい型の人間を作り出していく。
 ④人類の歴史を見ればわかるとおり、一つの支配権力、一つの国家形態が永遠であったことは一度もない。歴史は常に運動し、変化し、発展し、転換して次々と新しい時代を作り出していった。そして歴史を見ればわかるとおり、変化は静かで一直線ではない。爆発と収れんは歴史法則である。歴史は必然を持って前を目指すが、その過程では常に偶然が伴う。偶然は必然のための産物であり、偶然は必然のための糧である。そして必然の世界とは人民の人民による人民のための世界であり、より高度に発展したコミュニティー社会である。歴史は到達すべきところに必ず到達する。
 ⑤コミュニティーとは何か。人民による人民のための人民の世界とは何か。それは国家、社会、生産活動の運営目的を、最大限の利益と利潤追求のみに注ぐのではなく、すべてを人民の生活と文化水準と社会環境の安心・安全・安定のために注ぐ。
 ⑥生産第一主義、物質万能主義、拝金主義、弱肉強食の国家と社会ではなく、人間性の豊かさと人間の尊厳と人間としての連帯と共生の国家と社会にする。
 ⑦金と物がすべてではなく、人間の心と自然の豊かさが第一であり、姿や形だけの美しさではなく、働く人びとの生きる姿と心の美しさが第一であり、一人だけで急いで先に進むのではなく、遅くてもみんなが一緒に進む。
 ⑧人類とその社会は生まれたときから環境の産物であり、歴史的なものであった。環境が変われば人類とその社会も変わる。国家と権力が変われば人類社会は変わる。
 ⑨そのための力こそ、すべてを人民のための・人民による・人民権力であり、その具体的表現たる人民評議会である。
 ⑩人類が最初にはじめてつくった社会は、原始的ではあったが、そこにはまさに共同と共生と連帯の人間的社会があった。そしていくたの回り道をしたが、その間により大きくなってもとに帰る。つまりより高度に発達した近代的コミュニティー国家と社会へ。ここから本当の人間社会、人民の社会が生まれる。こうして人類は総力をあげて大宇宙との闘い、新しい闘い、宇宙の開発と開拓の闘いに進軍するであろう。


結 語

 人類の歴史は、哲学・科学的真理たるマルクス主義が示す法則に従って進む以外にない。そして21世紀の歴史時代はこのことをはっきりと今証明している。そのためにこそ歴史は絶対的真理としてのマルクス主義の純化、浄化、原点からの再出発を求めている。歴史はあくまで必然性を持って、到達すべきところに必ず到達するであろう!